こんにちは!肉切り歴12年の焼肉プランナーです。
肉や刺身などのスジの除去や、断面の美しさ、繊細な動きへの対応に長ける筋引き包丁は、業界に携わるプロの方にはなくてはならない包丁ですが、筋引き包丁の買い物は、他の包丁に比べて難易度が高いと言えます。
その理由は、家庭では普及していないからこそ使用者が少ない上、実際に使っている職人が、忙しい中わざわざレビューを公開することも少ないということ。
通販のレビューを参考にしようと思っても、プロが刃付けした新品の包丁は「とても切れる」と書いてあって当然の感想ですからね。
ランキングサイトなどでは、検索数や売れた個数、売上をベースにランキングしているだけであり、実際に使用しているかも定かではなく、使用していたとしても長年使っているわけではありませんので、筋引包丁は半年~1年ほどは使わないと、実際の使用感を判断するのは難しいと言えます。
なので、週末は一日30kg以上のお肉を捌く私の12年の肉切り経験や、社内の肉切りコンテストで入賞した実績などが、少しでも包丁選びに悩むあなたのお役に立てればと思い、今まで長く使用した筋引き包丁を評価、比較しました。
こんなあなたに役立つ記事です。
- 上級者の好みや、捌く肉に合う、筋引き包丁を探している
- 初心者にもオススメの筋引き包丁を探している
- デザインも重視して包丁を選びたいけど、性能が不安。
あなたの包丁選びの、少しでも参考になれば幸いです。
筋引き包丁とは? 柳刃との違い、選び方や特徴

先にも述べましたが、筋引き包丁とは、肉や刺身を切る時に使われる包丁で、長くて細い形状が特徴です。
長い理由は、断面を美しく仕上げるため。
長さが無い包丁では、一回の引き切りや押切りでは刃渡りが足りず、ギコギコと往復して切る必要があるため、長い筋引き包丁であればスーッと一回で切り終えられるようになり、肉や刺身の断面が綺麗に仕上げられるため、料理のクオリティが一段と増します。オススメは23cm~27cm。
また、形状が細い理由は、肉とスジの間などの狭い場所での角度調整が容易になることと、肉と包丁の面が接する面積を少なくすることで摩擦(抵抗)が減るためです。牛刀や三徳などの太い包丁であると、切る方向の角度を変える際に、包丁の背中部分が大きく動いてしまい、繊細な動きを体現できません。
上記の点を踏まえ、筋引き包丁は、料理のクオリティと、難易度の高いブロック肉の切り分けなどに活用されるため、自ずと家庭には需要の低い包丁となっています。
同じような用途で柳刃包丁という和包丁がありますが、こちらは片刃専用であるため、両側から砥石を挟んで研ぐシャープナーなどは使用出来ません。
逆に言えば、筋引き包丁は両刃であるためシャープナーも使用できますが、実際は片刃に研いでいる方の方が多いため、両刃・片刃どちらにも対応できるという利点がありますね。
また、筋引きだけに関わることではありませんが、包丁の材質は主に、鋼とステンレスの2種類に分けられます。
- 鋼:切れ味良く、研ぎ易い。ただし錆びやすい。
- ステンレス:切れ味普通、研ぎにくい代わり、錆びにくい。
上記の基本的な特徴を理解した上で包丁を選んでいけば、思っていたのと違う!といったトラブルも少なくなるでしょう。
切れ味と研ぎやすさ特化 ミソノ「UX10」

まずご紹介させて頂くのは、私が最も長く使用していた、ミソノUX10です。(ユーエックステン)
毎日包丁を使う方にメリットが多いため、プロ用の最高峰包丁と言えますが、初心者~中級者でも十分使え、ステンレスと鋼の中間に位置する素材を使用しています。
通常プロの方は、研ぎにくいステンレス材を嫌う傾向にありますが、UX10は特殊鋼であるため普通のステンレスより研磨性が高く、研ぎ時間を短縮でき、切れ味を容易に保てるメンテナンス性が最大の特徴。
そしてなんと、切れ味も自分の持つ包丁の中では7年使用しても尚、最高です。
しかし、自分が使用しているからと言って、決して100点満点ではありません。
刃が薄く仕上げられていることで、軽く、撓(しな)りやすいため、大きな塊肉を相手にすると、真っすぐに振り下ろす力が横にも分散し、包丁が湾曲してしまうのです。
そのため、骨肌や筋をV字に取り除きたいなどの包丁の切っ先だけを使用するシチュエーションでは、硬くて曲がらない包丁の方が使いやすいというのが正直なところ。
【UX10 メリット】
- かなり研ぎやすい
- 切れ味は最高峰
- 錆びにくい
【UX10 デメリット】
- 材質自体は硬いが、薄くてしなる。
- 値段が高い
- 切れ味の持続性は普通
和牛や国産牛は、赤身部分は柔らかいですが、スジは分厚く堅いため不向き。中間価格帯の肉を大量に捌く方は楽できる包丁と言えますね。
初心者にオススメ 河村刃物「堺菊守」

お次は私の1本目の包丁、堺菊守。(さかいきくもり)
価格は控えめかつ、純度の高い鋼であるが故、
純粋な鋼包丁の取り扱いを学びつつ、困ることも少ないというバランスの良い包丁です。
初心者の一本目にオススメという感じで、24cmと27cmどちらも使用経験がありますが、27cmは少し扱いにくかった印象。
ちなみに、社内のコンテストで初出場で60人中3位になった時の包丁はこの堺菊守なのです。
安いといっても、純度の高い鋼包丁は使い方次第では侮れませんね。
コンテスト決勝では一番早く切り終わっていましたが、私個人の切り方が社内の基準と違っていたことでポイントを落としたため、決してこの包丁のせいではありません。笑
【堺菊守 メリット】
- 切れ味良い
- 研ぎやすい
- 安い
【堺菊守 デメリット】
- かなり錆びやすい
まさに鋼包丁の特徴そのままな包丁ですね。
上級者向け 青木刃物「堺孝行33層ダマスカス鋼」
お次は皆さん一度は憧れる、ダマスカス鋼の包丁です。なんせ、かっこいいですよね。
今なら使いこなせるかもしれませんが、ダマスカス鋼という素材自体は、みなさん言うように研ぐのに時間がかかるのを実感しました。
一度研いだら切れ味が長く持続すると言っても、どんな包丁であれすぐに8割程度までは落ちます。
モンスターハンターでも、最大の切れ味が「紫」だったとしても、実質は「白~青」で戦う時間がほとんどですよねって話です。笑
硬い素材の砥石を持っていたり、研ぐ技術が高かったりなど、包丁以外の設備や技術が揃っている上級者には問題なく使いこなせる、そんな包丁だと思います。
切れ味に関しては、先に述べたミソノUX10と同等に良く切れましたが、まだ初心者を卒業したての当時は、刃も分厚ければ素材も硬く、研ぐ作業に時間がかかってしまったため、最も短命に終わりました。
【堺孝行ダマスカス メリット】
- 抜群の切れ味と持続性
- 肉が包丁にくっつきにくい(はがれやすい)
- 重みを利用した押切りが快適
【堺孝行ダマスカス デメリット】
- 研ぐのに時間がかかる
ダマスカス包丁はどれも価格は高いです。
最強の包丁 マサヒロ「正広別作」

業界ではご存じの方も多い「正広別作」はオススメから外せません。
まず初めに、意外と語られていないマサヒロシリーズの、正広作と正広別作の違いですが、
正広作は一般的に、あらゆる場面での使用を想定した万能包丁あるのに対し、
正広別作は、肉用として特別に製作されたシリーズを指します。
刃も分厚くしっかりしており研ぎやすい上に、切れ味の持続性も高いです。
肝心の切れ味ですが、研ぐ技術がある程度あれば、ミソノUX10やダマスカス鋼にも負けず、両者のコンディションによっては別作が上回ることも普通にあります。
同じ包丁に対し、手研ぎとシャープナーの併用だけはどの包丁でもやってはいけませんが、キョーセラのシャープナーしか使わない派の先輩が、10年以上使用していると言ってた正広別作の、十分すぎる切れ味を体感した時の驚きは忘れられません。
そして、この瞬間的な切れ味、切れ味の持続性、研ぎ易さ、の3拍子が揃った高性能にも関わらず、安すぎる価格が最強と呼ばれる所以です。
そんな万能な筋引き包丁をなぜ今、私が使用していないか。
それはみんな持っているから。笑
AB型の私には、みんなと同じという現実は受け入れ難いのです。
またその他の欠点を上げるとすれば、刃から柄(持ち手)にかけての形状が滑らかではなく、段になっているため、清掃していない人の正広は汚れが溜まっていることがありますね。
【正広別作 メリット】
- 切れ味は20,000円前後の高級包丁に劣らない
- 平均以上の研ぎやすさ
- 平均以上の持続性
- 価格が安い
【正広別作 デメリット】
- 使用者が多い
- グリップの付け根に汚れがたまる形状
バランスの良い包丁だけに、使いやすい24cmがオススメです。
黒い包丁 青木刃物「堺孝行 黒影」

こちらは使用経験はありませんが、私が今欲しい包丁です。笑
最近、購入して現役で使用している、一際目立つ黒い包丁です。
筋引きだけが、どこのショップでも品切れでしたが、ふと見たら在庫が確保されていたため、すぐに購入してしまいました。
和包丁でもお肉に使えるの?と疑問に思うかもしれませんが、洋包丁と比べてやや重みがあり、押切りやスリット(切れ目を入れる工程)においては包丁は重い方が切りやすいため相性抜群です。
また、大きな塊肉相手にも、物怖じしない刃の厚さが、今使っていて最も好きな部分です。
切れ味はUX10と同等ないし僅かに劣る程度であり、非常に研ぎ易いですが、かなり長めのグリップが体側にはみ出して来ますので、慣れるまで1ヶ月ほど時間はかかりました。
あと、なんと言いますか、まな板についた脂を、包丁の背中でこすり取る時ってありませんか?
私は癖でよくしますが、脂をこすり取るには、背中がデコボコしていて、まな板との間に隙間が出来るため脂を取り切れないのが少し不満です。(伝わりますか?このムーブ。笑)
性能や使い心地自体は初心者にもオススメできるほどですが、まだ研ぎ方が確立されていない人の場合は、せっかくの美しい黒いコーティングを削ってしまう可能性がありますので、中級者~プロの方が綺麗に使ってこそ絵になる包丁です。
【堺孝行黒影 メリット】
- 刃が丈夫で重みがあるため、大きな塊肉相手にも安定する
- フッ素コーティングのおかげで錆びにくい
- 切れ味良く、研ぎ易い
【堺孝行黒影 デメリット】
- グリップが長く、使い慣れるまで時間がかかる。
- 値段が高い。
- 背中がデコボコしていて、まな板の脂を削り取りにくい。
みんなから「何それ?!」と注目を浴びる瞬間を楽しめるかどうかです。
スミカマ 霞(KASUMI)チタンコーティング
こちらは私自身、非常に気になってはおりますが、使用経験がないので、おまけの一本としてご紹介します。
まさかの青い包丁!美しい輝きと、曲線美が特徴のスミカマの霞KASUMIシリーズ。
軽やかな包丁捌きで有名な、YouTuberの「気まぐれクック」さんが使用した際、その驚く切れ味と美しいデザインが話題となり、一時30,000~40,000円まで取引金額が高騰しましたが、現在は元々の定価である10,000円前後まで落ち着いた様子。
カラーリングもブルー以外に多数あり、おもちゃのように見えてしまいますが、包丁の一級生産地として有名な岐阜県関市のメーカーともあり切れ味は十分とのこと。
私が気になる理由としては、これまで紹介した包丁より短い20cmである点とその材質にあります。
私の以前の現場では、営業中に包丁を触ることはほとんどありませんでしたが、現在はオーダーをしながらお肉を切ることが多く、作業台に大きくて錆びやすい包丁が一本あると、オーダーに集中できないため、取り回しの良い大きさかつ、錆びにくい包丁を一本用意したいと考えているため。
また、野菜のカットには、純粋な鋼の包丁は、金属臭の付着や食材の劣化の原因ともなるため適しておらず、ステンレス系の方が向いているとされており、チタンコーティングされていることでそれを抑制できるメリットもあります。
そこで、錆びに強いモリブデンバナジウム鋼を使用していて、チタンコーティングされたコンパクトな、おまけになんか青くてカッコ良い「霞KASUMI」ほど、今の自分の需要がマッチした包丁はないと思っています。
ただし、モリブデンバナジウム鋼は、ステンレスよりも耐摩耗性が高いため、切れ味が落ちにくい反面、研ぎにくいというデメリットもあり、包丁研ぎに自信のない方は注意が必要ですね。
【スミカマ霞KASUMI メリット】
- 20cmでコンパクト
- 肉や魚はもちろん、野菜にも使用できる
- カラーリングが豊富
【スミカマ霞KASUMI デメリット】
- ステンレスより研ぎにくいとされる材質
肉切り包丁(筋引き)オススメ6選
それでは、まとめです!
ミソノ UX10:切れ味と研ぎ易さは最高。刃が薄いため大きな塊肉には向かない。
河村刃物 堺菊守:初心者が成長できる包丁。
青木刃物 堺孝行ダマスカス:切れ味の持続性が最も高い。初心者にはオススメできない。
マサヒロ 正広別作:コスパ最強。こだわりなければコレ一択。
青木刃物 堺孝行黒影:バランス良く高性能。独特な形状を使いこなせるか鍵。
スミカマ 霞KASUMI:コンパクトで万能。包丁研ぎに慣れていない人は懸念。
以上です。
更に上級者向け、もっとこだわりを持つ方には、各包丁メーカー各ブランドのハイエンドモデルだけの筋引き包丁をまとめた、以下記事も楽しんで頂けると思いますので是非ご覧ください。
あなたの肉切りが楽しくなって、作業が捗る手助けになれば幸いです。
焼肉プランナーでした!
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